今日このようなフォーラムの開催に、私が再び携われるようになった経緯と、そのことに対する御礼の気持ちを、皆様にお伝えすることをもって、 開会のご挨拶に代えさせていただきます。
実は、私事(わたくしごと)ではありますが、小生、相当重症の糖尿病でした。このことが判明したのは、全くの偶然で、今日ご出席の小松社長が私を松江に40日間、ご招待下さり、その機会に検査を受けたお蔭です。
それはちょうど4年前の2月のことで、 検査の結果は、へモグロビが11.5でした。その後、帰京し、医師の指導を受けながら健康の回復に努めましたが、数値は8.0以下には下がりませんでした。医師は「あなたの総合的な検査結果の数値の状態ではいつ倒れても可笑しくない、何も起こらないのが奇跡なくらいだ。」といきなりイヤローカードを切りました。ところが昨年末、親友から頼まれた仕事を手伝い、体を動かすことによって、先月には、その数値が6.5に下がり、活力と意欲が漲ってきました。

二つ目は、このフォーラムの共同主催者である市河会長に対する御礼の気持ちです。市河会長は15歳の時、長崎で被爆、明治大学夜学に通いながら苦学され、85歳の現在、30のビル、100億円の資産を築きあげられ、今も現役でご活躍されています。予科練生の生き残りである会長は、「金儲けは手段であって、世の中の為に使うべきだ」と常々おっしゃり、今日の会合のスポンサーを快諾くださっております。
広島で被爆された平山郁夫画伯、今もご健在のブルネイの国父、ペンギラン・ユソフ殿下(93歳)、2009年8月、国際平和文化フォーラムの国際会議に、ロゴをプリントして何百枚ものTシャツを寄贈くださった会社のオーナー(ご夫人:88歳)もまた、広島の被爆者でした。
「自分が今も元気なのは創価学会の生命哲学のお蔭だ」と市河会長はよくおっしゃっています。
生命とは何か?「盲目的な意思である」とすればニヒリズムに陥り、生存競争の修羅場に入り込んでしまいます。
最近A. アインシュタインの娘リーゼルに宛てた手紙を目にしました。彼によれば、宇宙は互いに連関性を持った一大有機体であり、目的性を持っている。そして「この生命に意味を与えるのが愛である。宇宙の根源は愛の力である」言っています。
http://www.owaki.info/shiryo/Einstein/letter.html
『地球時代の哲学』(佐藤優著)は 、池田大作会長とA.とトインビーの対話を基督教信者である佐藤優氏が読み解いたものです。この本を読みながら、共生・共栄主義の次に来る「共義主義」こそ、これからの時代のキーワードだと痛感ました。「共義」の前提は、信頼と尊敬心であり、独善排他性、ましてや、暴力でもってでも自己の主張を押し通そうする蛮行は決して許されません。資源や土地、金融の共同活用と言った具体的現実からも近代社会システムの変革が迫られていることは、未来社会への追い風です。

三つ目は、今日も司会を引き受けてくださっている井関利明先生に対するお礼の気持ちです。
先生は、長年マーケティング学会の会長として数々の流行語を生みだされました。
また慶応大学藤沢キャンパス構想を立案され、全国の大学改革に取り組まれた方です。
先生とは1974年2月「新しい文明を語る会」(http://www.miraikoso.org/before/shinbunmei/atarashiibunmei.html)発足当初からのお付き合いです。丸の内界隈の財界人と学者との毎月の会合を見事な司会により進めて頂きました。近年、原発、憲法、沖縄、近隣諸国との国際関係など国論を二分する議論が沸騰していますが、これを止揚して合意を形成する叡智と手法を井関先生はお持ちです。その根底には、直観、理性と感性の融合が見られます。小生は、毎日1億円以上もの経費を使う割には、きわめて生産性の低い国会審議のTV中継を延々と許している国会議員も、井関塾に弟子入りし、知識を収斂する方法論を学んで恥をしのいではどうかと思っています。

今日の発題者である野田一夫先生をご紹介します。
一言にして言えば、野田先生は“アイデア一つで生きて来られた方”です。先生の半生を紐解くと、アイデア(ビジョン)が如何に大切か、大きな力かが立証されています。
野田先生は、小生が元立教大学総長松下正寿先生の鞄持ちをしていた頃からのお知り合いです。野田先生は日本で初めて観光学科を創られた方であり、今や観光学科は立教大学の看板の1つです。アイデア一つで、ニューオータニの土地にザ・フォーラムという8階建てのビルを建て、紀尾井町クラブを創設されました。近くのビルで学術活動をしていた小生も大いに活用させていただきました。また、先生は多摩情報大学、宮城大学を始め5つの大学を創られた方でもあります。先日久しぶりにお会いした折にも、「大脇君、もう大学の時代じゃないよ!日本の未来のためには、世界のどこの大学にでも留学できるような国際高校を創ることだ!」だとお聞きし、目から鱗でした。
先生はいつも人より一歩先、世界のトレンドを熟知されており、本質的で辛辣な提言をされます。 月刊『世界』の2月号には「理念なきオリンピック」が特集されています。この言葉は昨年から野田一夫先生が吐露されている言葉でもあります。ご案内の趣旨文にも書きましたように、2020年のオリンピック、物の豊かさのゆえに国民は気概を失っています。東北の復興においてしかりです。
今日は野田先生(88歳の)に活を入れていただき、皆様のアイデアを引き出し、「オリンピックを日本再生のチャンスとするにはどうしたらよいか?」皆様の忌憚のないご意見をお伺いし、具体的シナリオを描く契機となれば幸いです。
先日、野田先生の盟友、安藤忠雄先生とお会いする機会がありました。この『安藤忠雄』の本は先生の建築史自叙伝で、写真が豊富に入っています。その折、先生は「自由と勇気と責任だ」とおっしゃいました。プロのボクサーの道から建築家へ転向され、大学にも行けず独学で世界的な大建築家となられたのは、野性的な力、人に媚びない自立した精神によるものであろうと推察致します。人の考えの及ばない奇抜な発想の数々もそのような自由な精神、勇気、責任感から泉のごとく湧き出るのだと痛感しました。

以上ご紹介させて頂きましたように、小生がご縁を頂いている諸先生、また今日ご来場いただけなかった皆様を含め、ご来場の皆様に今日の会合をもつことができましたことを改めて感謝申し上げます。「お蔭様で」ということばは、殺伐とした現代社会にぬくもりと潤いを与える美しい日本語です。「もったいない」(ワンガリ・マータイ)は、病める地球を癒すキーワードとして世界でも注目を集めました。「有難う」と言う言葉にも深みがあります。近代化によって失われつつあるかに見える美しい伝統統文化が、幸いにも東アジア3国には残っています。(参考:http://www.owaki.info/shiryo/pwpaj/statement.html
今日ご出席の抱社長は、2020年のオリンピックには、会場の近くに舞台小屋を借りてでも借りて、オリンピックの期間中、中国、韓国の演劇仲間も誘って共同公演したいと行動されています。止めても止まらない溢れるボランティア精神、これこそが、何千億円の予算を云々することよりもっと大切なことではないでしょうか!進退錐谷のならいない十字路線上に立った現代文明を東洋の心をもって「おもてなし」し、新しい人類文明を解産の契機とすること、これこそオリンピックの理念にふさわしいのではないかと考えています。今日の会合が自由自在・闊達な議論が交され、実り多い会合となるよう祈念し、開会のご挨拶とさせていただきます。

2016年2月27日午後2時
地球市民機構副理事長  大脇 準一郎 拝