土壌造成:最近の活動(2011年~)

  

  東日本大震災・復旧・復興課題改善実証試験報告

   (一般社団法人循環型社会研究協会)土壌改善プロジェクトチーム
                             レポート  チーフ 梶栗 達也

 我々の技術が、国土交通省NETⅠSに東日本大震災復旧・復興に資する工法として登録された。
このことから、被災地を一日も早く適正に復旧するにはどの様な手段が有るか一般社団法人循環型
社会研究協会の協会員が検討し、宮城県名取市災害復旧・復興委員会の太田稔朗委員長に本協会
の技術で、早期適正な復旧に役に立つ実証試験を行いたい旨を申し入れた。

 太田委員長は、その実証試験をする用地はどこが適当かと現地を案内するなど復旧・復興関係機関
(宮城県・名取市・土地改良区・農協等)に、我々を紹介し実証試験の意義を説明してもらった。 
このことで、名取市植松田中(圃場)と名取市飯野坂下大畔(畑)で除塩等有害物質(重金属)常温
永久固定無害化実証試験を行うこととなった。   
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1、宮城県名取市植松田中(圃場)海底泥土汚染調査 平成23年5月12日
  名取市市議会議員太田稔朗復興委員長と、津波が巻き上げて圃場を覆った、海底泥土の
  厚さ等の調査状況。試料採取状況
  平成23年5月25日名取市市議会議員太田稔朗復興委員長と、津波が巻き上げて圃場を
   覆った、海底泥土の厚さ等の調査と土壌試料採取状況。

 施工フローチャート
  ① 瓦礫除去・清掃。 ② カッセー畜産たい肥と、中性固化材「泥ん固
    No.1-B」をモルタル吹付けガン機で均一に散布する状況。
  ③ (右)津波が巻き上げた、海底泥土で覆われた農耕地。
  ④ (左)カッセー畜産たい肥改良材散布終了。

  ⑤ 耕起し、たい肥と耕土を撹拌し、津波に巻き上げられ、田畑の耕土を覆った、海底に堆積
    していた、有害物質を含む泥土を不溶化改良します。
  ⑥ 海底汚泥に含んでいる、塩分(塩素・ナトリウム塩・マグネッシウム塩・カリウム塩・カルシウム塩)、
    植物毒素アルミニウム及び有害重金属類(As.Cd等々)。
  ⑦ カッセー畜産たい肥の、腐植酸や合成樹脂で、微生物が有害物質を包み込む。
  ⑧ 更に、バチルス菌群は体外の胞子袋に蓄えていた希硫酸を、有害物質を包み込んだ
     合成樹脂(ポリアクリルアミド)に、寄与しポリアクリルアミド重合固化する。
  ⑨ 作付け可能にまで改善される。
  ⑩ 改善実証試験田に野菜作付け。

  当地区の除塩試験結果は、理想的に成され特に問題は生じなかった。
  除塩・電気伝導率障害改善試験後、約3ヶ月程度で国が定める数値より低い数値を示した。

  分析結果
  電気伝導率(EC)・ 塩分(NaCl)分析機関
  平成23年5月25日 7.43mS/cm・ 2.25% ㈱大東環境科学
  平成23年6月04日 0.92mS/cm・ 0.10% ㈱大東環境科学
  平成23年6月16日 1.36mS/cm・ 0.04% 耕作者立会測定
  平成23年9月05日 0.45mS/cm・ 0.02% ㈱平山電機環境

  *国が定める数値・EC : 0.5未満 ・NaCl: 0.05未満

 〔名取市植松田中圃場結果報告〕
 宮城県名取市植松田中の、圃場での実証試験結果は重金属等の常温永久無害固定が行われ
 電気伝導率も、国が示す0.5未満に対し0.45mS/cmまで改善され、塩分濃度も国が示す
 0.05%未満に対し0.02%まで改善され実証改善試験は成功した。

2.宮城県名取市飯野坂下大畔(畑)
 液状化陥没、地震前の海抜0m地域、地震後8.4倍増に。
 1) 地下水(海水)の毛管上昇障害による、ナトリウム塩・マグネッシュウム塩などの作物
   への生育障害等々。

 海抜0m地域での除塩試験結果
 宮城県名取市飯野坂下大畔(畑)にて、カッセーチップ堆肥による除塩試験を行うも、当畑地は
 液状化が生じた形跡もあり、シリカ細粒主体であることと海抜が0mに等しく、地下水(海水)の
 毛管上昇が見受けられ、除塩試験開始2週間後、国の規定0.05%未満に対し現地測定値は
 0.0102%と、基準値以下に改善されたが、電気伝導度(EC)数値は国の規定0.5%未満に
 対し現地測定値は、0.954mS/cmと改善されなかった。
 調査の結果、その原因は地下水の毛管上昇によるものと判明した。

 2)-1 現地名取市飯野坂下大畔(畑)での、除塩等の実証試験は地下水(海水)の毛管
  上昇により永続的改善は出来ず失敗。そのことから、畑土を採取し移植ポットによる幼植
  物試験及び毛管上昇抑止試験を実施したが結果は何れも失敗した。
  念のため試験区基盤土を採取し、その試料に中性固化材の添加量を変えたもの10cm
  Ø×12.5cm各一本の円柱形を作り、毛管上昇を抑止する不透水層の材料に出来るか
  を試験した。
  畑試験区、細粒シリカ主体土壌による不透水層の模型による毛管上昇抑止試験結果。
  不透水層試験 直径100mmØ 高さ125mm 円柱の上部白くなっているのは塩分
  受皿に海水を入れ、無くなれば補充し1ヶ月経過後自然乾燥させた状態。

 2)-2 毛管上昇改善策試験(現地畑土による)
  現地名取市飯野坂下大畔(畑)土壌にて、毛管上昇抑止遮断層試験を実施するも細粒の
  シリカ主体の砂であり毛管上昇が著しく早く結果は何れも上手く行かなかった。
  ① 試験開始1時間後 ② 試験開始24時間後 ③ 試験開始48時間後
  ④ 試験開始1ヶ月後毛管上昇による塩害改善試験失敗
  試験の結果、現地畑土を中性固化材にて処理し、固めるも毛管上昇作用は改善されず作物を
  栽培しても、真夏の乾燥期には塩害が生じ作物の収穫は望めない。
  ※ 本試験の結果、現地畑土を中性固化材で固化しても不透水層の効果が得られないことが判明。

  〔提 案〕
   試験の結果、現地畑土では毛管上昇抑止遮断層を作るのは無理であり、粘質系の土を山から
  下地分として100㎜程度覆土し、それに中性固化材を10%程度添加してバッホウのアーム
  の先にスタビライザァーを取り付け撹拌混練する。更に同、バックホウのアームからスタビラ
  イザァーを取り外し振動プレートに取り替え転圧し固め不透水層を作る。その上層に、耕土用
  土(マサ土)を15cm程度覆土し、「カッセー畜産たい肥」を3.500kg/10a当りに投入散布し水
   を張り代掻きし土壌改良することが望ましい。
   ①スタビライザァー ②振動プレート ③トラックター

<所見>
  通常不透水層素材には、粘性土を多く含む土に中性固化材を添加することにより毛管上昇を
 抑止可能な不透水層を設けることが可能であり、国が「食料生産地域再生のための先端技術展
 開事業」の委託公募に毛管上昇抑止不透水層実証研究を行いたい旨で応募し、受付られたがヒ
 アリング時に不透水層を作るには現地土は液状化による陥没などで、地下の細かい砂が殆ど
 であり不透水層を作る資材としては向かない旨を説明し、通常不透水層を作る資材に適してい
 るのは酸性白土が一般的であることを話し、厚さは10cm程度が必要であることと、その上
 層に耕土として厚さ15cm程度の覆土を行い、カッセー畜産たい肥を3.5トン/10a当り
 に投入し耕土を改良することにより、安心・安全な農作物が収穫出来ることを説明した。

  そのことに対し、審査員からの的を着いた質問は出ず農水の担当官からその処置全体で幾ら
 かかるかと問われた。私は、その様な土が何処にあるか分からないため計画では今年1年間は
 その様な調査しか行わず40万程度の調査費しか計画に計上してないと答えた。
  しかし、審査の結果では国の被災地復旧研究委託には採用には至らなかった。

3. 津波に巻き上げられ、農耕地を被覆した海底汚泥に含まれる有害重金属As.Cd.等は
  雨水(酸性雨に含む20%以下の「希薄硝酸水溶液(HNO3)」)が溶脱イオン化する。


1) ヒ素(有害重金属(As))雨水による溶出試験結果で基準値の19~45倍。下流に行 くと、
  13~15倍になった。 東北大学大学院調査
  このヒ素は、戦時中日本陸軍が東北地方で金鉱石を採掘しその金鉱石を、製錬する際に使用
  されたものと言われている。そのヒ素混入汚濁水が、河川を通じ海に流れ込み他の物質と海底に
  堆積し安定していたが、この度の津波に巻き上げられ陸を被覆したことにより、酸性雨が直接当る
  ことによりどうなるかが心配されると、同大学院環境理学研究科の土屋範芳教授は警告を発している。

2) 例えば自然由来のヒ素が溶出した場合、平成3年8月23日付け環境庁告示第46号の溶出試験を
  行い、0.022mg/ℓ溶出するも基準値0.01mg/ℓ以下に対し2.2倍でも問題となり、「カッセー工法」
  では0.005mg/ℓ若しくは計量限界値0.005mg/ℓ未満に不溶化改善した。
  〔溶出試験方法〕は、後記方法の1mol以下の硝酸溶液にて行う。
  平成3年8月23日付け環境庁告示第46号付表
  「六価クロム溶出試験方法」 「カドミウム溶出試験試験方法」 「希薄硝酸水溶液HNO3」による溶出
   試験0.1mol~1mol/ℓ硝酸溶液とは 水(98%)対硝酸イオン(2%)溶液を0.1mol硝酸溶液と言う。
    水(80%)対硝酸イオン(20%)溶液を1mol硝酸溶液と言う。
  ※ 希薄硝酸水溶液は、あらゆる鉱物を溶脱(イオン)化する。
  ※ 硝酸イオン20%以下の溶液は、あらゆる鉱物をイオン化する。逆に、硝酸イオンが20%以上に
     なるとあらゆる鉱物を化合するとされている。

3) ヒ素の障害とは
<事例 A>
判 決 「今日をスタートに」ヒ素(有機ヒ素)
           
茨城 公害調整委、健康被害認める。茨城県神栖市で有機ヒ素に汚染された井戸水を飲み
健康被害を受けたとして住民39人が国と県に損害賠償を求めていた問題で、国の公害等調査
委員会は11日、県に対して住民37人に総額2826万円の慰謝料を払うよう命じた。同委員会が、
住民の健康被害について行政の責任を認めたのは初めて。有機ヒ素を含むコククリート塊が
おせんげんだったとする一方、旧日本陸軍の毒ガス成分として製造されたヒ素についての国の
管理責任は認めなかった。」

「汚染が広がった責任の所存や、汚染と健康被害の因果関係が争われていた。裁定は、
1999年に市内の井戸水から環境基準の45倍のヒ素が検出された後も県は周囲の
住民には知らせず、追加調査をしなかったなどとし、発達障害となった10~18歳の
5人への慰謝料300万円のほか、目まいなどの病状を訴えた住民8人の健康被害を
認め、42万~180万円の支払いを命じた。残り24人についても、平穏に生活する権利が
侵害されてなどとして5万~20万の慰謝料を認めた。大部好広・県生活環境部次長は
「対応は適切と主張してきたが、認められず遺憾」とし、環境省は「管理責任はないとの
国の主張が認められた。地域住民の健康不安解消の対策は、引き続き積極的に行なう」と
している。」<住民涙と安堵37面><37面>
旧日本軍の毒ガス成分による茨城県神栖市の井戸水ヒ素汚染問題@を巡り、公害等調整
委員会で11日、初めて住民の健康被害が認められた。委員会への申し立てから6年。
健康被害に苦しんできた住民らは、県の責任が認められたことに「言葉に表せないくらい
ほっとした」と安堵の表情を浮かべた。@神栖市の井戸水ヒ素汚染問題2003年、茨城県
神栖市(当時・神栖町)の住民の間で健康被害の訴えが相次ぎ、被害を訴えた住民の
井戸水からヒ素が検出された。05年1月には、原因とみられるヒ素を含むコンクリート塊が
近くで見つかり、06年7月に住民が、国や県に賠償を求めて、国の公害等調整委員会に
責任裁定を申請した。..........................................................................................................
 裁定は県の対応を厳しく断じ、責任を認めた。健康被害が明るみに出る前の1999年
1月、保健所が基準の45倍を超すヒ素が検出されていたことを把握していたにもかかわ
らず、県は周囲の住民に知らせず、原因究明にも消極的だった。
住民側が同委員会に責任裁定を申請後も「責任はない」と和解を拒否した。今回の裁定
を不服とする場合、30日以内に訴訟を起こし、対応に問題がなかったか争うことになる。
 一方、国は健康被害を受けた住民に対し、医療費が無料になる医療手当帳を交付。
 調査協力金として、1人あたり毎月1万5000円~3万5000円を給付するなどしている
が、いずれも暫定的な措置だ。
 馬場さんらは「子どもたちは未来を奪われた。(国には)責任を持って面倒をみてほしい」と
恒久的な補償を訴え、住民側の坂本博之弁護士は、「誰が不法投棄したかわからないという
理由で、国には責任がないと判決したことは不満が残る」と話した。
          (読売新聞2012年(平成24年)5月12日土曜日―記事転記)

<事例B>東日本大震災・被災地の岩手県・宮城県・福島県においても津波で陸に巻き上げ
      られた、海底に堆積していた泥土よりヒ素(As)が基準の19~45倍も雨水での溶出
      試験で溶出したことを発表した。2011年度日本土壌肥料学会、東北支部大会(岩手大会)
東日本大震災被害地域の土壌の諸特性
   第一報 津波堆積物の理化学性
   
   
東北大学大学院環境科学研究科
   
山崎慎一・小川泰正・岡本 敦・平野伸夫山田亮一・土屋範芳

分析方法EDXRFの試料処理法、他の分析法の前処理法、 検量線用標準試料
ヒ素(As)検量線用標準試料 一般理化学性水溶性陽イオンの組成 多量成分(Na2O)

多量成分(MɡO) 多量成分2価アルミニウム(Al2O3) 多量成分(K2O) 多量成分(CaO)
多量成分(TiO2) 多量成分(MnO)多量成分2価鉄(Fe2O3) 微量元素(EDXRF)微量要素(ICP-MS)

土地改良法特別「除塩」法案は否決か
菅政権は14日、東日本大震災の津波で被害を受けた農地の復旧のため、海水につかった
農地から塩分を除く事業に対し、国が直接補助できる制度の創設を決めた。土地改良法の
特別法案を今国会に提出する。農林水産省によると、津波被害を受けた農地は、コメどころの
宮城県や福島県を中心に2万8600ha(東京ドーム5千個分)・・・とあったが結果は、除塩効果
のある農耕地に巻き上げられた海底泥土の鋤き取りは、開始直後に中止指示があり極々一部
だけ行うも取りやめの指示が出た。(朝日新聞)

おわりに
国は、米どころ宮城県や福島県を中心に28.600haと広大な面積となった、被災地の復旧・復興を
如何にして成すのか良い方策はあるのか、中途半端な改善対策手段を講じて後に「神栖ヒ素県に
慰謝料命令」と同様に責任を県に押し付けるのか、そうであれば県も慎重に調査し国に対し交渉し
ないと・・・例を後記する。

 「以前、報道ステーションにて汽仙沼市環境課の及川 正弘課長は、「(鉱山の管理会社が)人体に
  影響ないレベルと説明したと聞いている。」と語った。」(テレビ朝日)

このことは、神栖市の井戸水ヒ素汚染問題の国が定める環境基準の45倍のヒ素が検出されたに対し、
宮城県汽仙沼市地域鉱山跡地では19~45倍で下流の方では13~15倍となっており「鉱山の管理
会社が人体に影響のないレベルと説明したと聞いている。」と鵜呑みにして良いのか。もし問題が生じた
場合、責任は県か市が取るのか何のために国は基準値を0.01mg/ℓ以下と定めているのか無責任な
言動は慎むべきと思う。


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 漁業権放棄地域調査報告書 新潟漁業組合 調査船 第七鈴丸

      調査実施者 池田 満、津川達雄、鈴木 孝
      サポーター  美濃欣之、小川清昭、佐藤元昭、新保裕之

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                     目      次
1, 序言
2, 調査内容と調査ポイントの設定
3, 海底の地形調査;排出堆積物分布と総容積算定
4, 生物生息調査;わかめ、牡鱗、なまこ
5, 溶存酸素量の測定
6, 総合評価
7, 沿岸漁業者の抱える悩み
          1、  序    言

 新潟西m赤灯台を含む防波堤西側に将来様々な施設建設を想定した国の計画に従って
漁業権を放棄した区域がある。すでに廃棄物処理場も建設されている。
新潟西港の浚渫の任務を負う国交省は比較的海が穏やかな夏季間は浚渫船で泥を沖合
に運び投棄してきた。沖合の泥の投棄場所は魚が蜻集することが知られている。

 一方定められた区域外での投棄が行われ、投棄物は泥だけでなく船の残骸等産業廃棄物の混入があり、漁網に損傷を与える被害の続出があった。この問題については現在国交省と新潟漁業組合とで協議が行われているところである。このなかで浮上したのが、漁業権放棄区域の調査であった。

 冬期間は荒天侯のため浚渫船で沖合に泥を投棄できないため、信濃川からパイプを引き、漁業権放棄区域のー角に泥水を直接排出してきた。ここは閉鎖された場所でないためさまざまな影響が区域外に及ぶ可能性がある。
 
果たして沖合のように魚介類の蛸集する場所になっているのか、或いはなんらかの理由で死の海になっているのか、その影響はどこまで及んでいるのか、近隣の沿岸漁業者にとってこの調査の重要性があらためて認識され取り組むことになった。

調査項目:調査といっても漁業者ができることには限りがある。とりあえずできることと
        して、以下の項目に設定した。
A.パイプ排出口周辺の地形; GPS魚探を使用
B.漁業権放棄区域での生物生態調査;5ポイントで潜水写真撮影
C. 5ポイントで上層、中層、下層部の溶存酸素量の測定


潜水写真撮影ポイントと地形調査区域の設定
図は西港河口部の衛星写真である(Google Earth 参照)信濃川からの泥砂の
影響が広くみられる。潜水ポイントは5か所選んで図示した。
地形調査は2ポイント1と2を結ぶ線とそれとほぼ直角のポイント2と3を結ぶ線で
囲まれる四角形内とさらに限定した。パイプ排出口はポイント2である。

パイプ排出口周辺の地形調査; DGPS魚探を使用
GP S魚探を使用して緯度、経度、水深のデーターを採取した地点をGoogle
Map上でそれぞれマークで示した。地形図で用いたのはその一部である。

ここでX軸は海岸線でありポイント2、2十を結ぶ線とほぼ近似できる(誤差
範囲6度)。Y軸は沖合に伸びるポイント1と2を結ぶ線であり、産業廃棄場堰
堤に平行である。パイプ排出口からの等高線は均等な円分布を示していない。
赤灯台方向への拡散がブロックされ、むしろ廃棄場堰堤に沿っての累積が顕著
であることが見て取れる。赤灯台側から廃棄場堰堤に向かっての時計回りの強い
海流の存在が示唆される。

漁業権放棄区域での生物生態調査; ポイントで潜水写真撮影
 定められた潜水ポイントで写真撮影を行い、各地点でのワカメ、牡蜻、なまこ
の生息状況をしらべ、それぞれに100点満点の評価を行った。

生物生息状況が各地点で大きな差があったことに反して、溶存酸素濃度で見る
限り各地点の水質は表層、中層、下層共に、おおむね良好であった。海流によ
る活発な循環が澱みを無くしている証左であろう。心配していた酸素濃度の著
しい低下地点はなく、杞憂にすぎなかった。ただ赤灯台の切れ間に近い地点5
の中層、低層が他と比較してlmg/L程度酸素濃度が低い。多分切れ間から入り込
む川水の影響と思われるが、生物生息状況がよいのをみると多少の酸素濃度の
低下を上回る恩恵を川水から得ているのかもしれない。

総合評価
 総合点をみると地点2のパイプ排出口から離れるに従って生物生息状況はよく
なってことが如実に示された。パイプ排出口近辺は完全に磯焼け状態で、なに
も生息していない。かろうじて溶存酸素濃度が良好であったのみである。当初
は夏季浚渫船による沖合投棄場所での魚の婿集と似た状況の期待もあった。し
かし調査結果は全く違っていた。この追いはなにか。本調査で行った、わかめ、
牡蜻、なまこは魚と違って川水に弱いのかもしれない。 少なくとも牡蜻は真
水に大変弱いことは良く知られている。地点2のような局所的に川水が注入さ
れる場所では、急激な塩分濃度や温度変化をもたらす。一方河口沖合では川水
と海水が比較的ゆるやかに混合している。これが原因かもしれない。しかしな
まこは移動可能であるから、川水の注水が終わったあと川の泥が好物であるな
らば蛸集してもよいのではないか。しかしそれはなかった。何故だろう。疑問
はつきない。
                
 なぜ漁業者が漁業権放棄地区の調査を行ったのか。

 漁業組合内において何故放棄地区の調査をするのかという疑問が多数あった。
磯の漁業者はここ30-40年間の漁業衰退を憂え、その原因をさぐりなんとか
できないかと思ってきた。漁業権放棄区域といえどもそこが開放的に海につな
がっている以上状況の把握は欠かせないとしたのはその思いが根底にある。
悩みの具体例としてさざえ、牡蛎、あさりの三つの事例について述べる。
護岸工事によって構築された縦堤や潜堤に、牡蛎、さざえ、海藻がかなり豊富
に付着するようになった。現在ではそれが磯の漁獲の主流となっている。最近
牡蛎の水揚げの30%近くが口を開けてすでに死んでいる状況が続いた。
上図は死牡蛎の写真である。大きさからみて生後4-5年経過しているものが
主流である。 この3 0%に及ぶ大量死は捕獲場所が異なっても余り変わらな
い。牡蛎の寿命はもっと長いので自然死とは考え難い。今年度岩船、山北でも
似た状況が報告され、県の水産研究所がこの原因究明にあたることとなった。

 図は今年8月海水浴にきた鈴丸の孫が鈴丸漁舎の渚で手にしたあさりである。
いづれも小さいものが殆どで年齢半年と推定される。もっと大きくなる来年を
期待しようと言い聞かせ海に戻させた。その後沖合を含めてあさりの生息状況
を調べた。大きさ20・30mmのあさりは皆無であった。渚の小さいあさりはこの
浜に親貝が生息し、そこから生み出されているのではなかった。どこかから
流れついたものである。あさりの幼生は長くて2週間海に漂えるそうなので、
かなり遠くからきたのかも知れない。あさりがこの砂浜から姿を消してから久
しい。たとい半年ものでも姿を見せたのは嬉しいことである。国交省による最
近の造浜工事の成果なのか。しかしこの夏にみたあさりは秋の時化で、貝殻が
砂浜に打ち上げられていた。折角いついたあさりが長生きできない。なにが原
因なのだろうか。この原因をなんとか突き止め再び豊富なあさりの生息状況の
再来を願ってやまない。

 海底の汚泥化を如実に示す事例としてさざえが挙げられる。潜堤近傍の海底は
汚泥化がすすんでおりここでとれたさざえは強烈な悪臭を放つ。とても市場に
だせるものではない。むしろ潜堤より岸側の縦堤(1-4突堤)の周辺は汚泥化
が進んでないので、ここから採れたさざえは市場にだすことができた。何故潜堤
近傍の汚泥化がすすむのか。この汚泥はどこから運ばれたのか。ヒントになる
のは海上保安庁が漂流ブイによる信濃川河口の海流調査である(平成17年6月
保安庁ホームページ参照)
 それによると河口突堤の東側で北東方向に最大0.9m/sの流れがあり、河口から
2,8km離れたところでさえも、0.3m/s北東方向の流れが確認されている。
 一方突堤の西側では、東側とは正反対、南東方向0.2m/sの比較的弱い流れが
ある。冬期間の流れについての観測はないが、主要な強い季節風が西南西である
ことを考慮すると、沖合泥捨て場の堆積物は冬期間でも北東方向に夏季間よりも
さらに増幅された形での拡散移動が主流と推察される。

 日和山汚泥化の主要原因にはならないのでないか。ここで地点2を中心とした
パイプ排出口からと関屋分水からの堆積物の移動の可能性が浮上する。
関屋分水は豪雨時に威力を発揮しているが、それも信濃川水位上昇期の夏季間
に限定される。従って日和山汚泥化の主要な源は地点2にあるのではないかと
思われる。事実地点1より日和山方向へのびる廃棄物処理場堰堤沖合水深は6
mであり、地点2からの連続性がある。

 以上述べたことは推察に過ぎない。本調査では区域が限定されており、上記の
推察の妥当性を完全に証明するものになっていない。より広範囲の調査が望まれる。
またさざえの悪臭の化学的要因の調査は重要であると考える。それが致し方なく
堆積した汚泥の浄化対策を見出す可能性がある。特に西突堤東側沿岸における
牡鱗、さざえ、ワカメの豊かな漁場の出現が期待できると考える。今後の課題としたい。