「21世紀、「龍馬」役をみんなで」   海野和三郎

「ことば」と「複雑系」と「時間」との3者間の混沌が地球規模で収拾がつかなくなり、人
類は新しい進化に突入せざるを得ない時代になりました。人類進化は少数の英雄や聖人君子
の成し得ることではなく、21世紀のように、多数のヒトが人類の未来に不安を抱き、「い
のち」の伝承を決意して立ち上がって起きると考えられます。幕末の混迷期に一介の武人に
過ぎない龍馬が国のために為した役目を、今の時代には、私たちの誰もが人類全体のために
できるわけです。「危機は好機」とマタイス神父さんに聞きましたが、人類絶滅の大危機は
人類進化の大好機のわけで、誰もが自分の得意とするやり方で「龍馬」を実行することがで
きる、それほどの大危機に21世紀があることがこの10年ほどの間に明らかになってきま
した。「ことば」と「複雑系」と「時間」との3者間の混沌と上に述べましたが、例えば、
「ことば」については、昔は何年何十年と掛かって伝わった情報が今は1秒で伝わる時代に
なりました。しかし、内容的には、ゲーデルの「述語論理の不完全性」で典型的に証明され
たように、「ことば」はすべて論理としては不完全で、むしろ、「ことば」の特徴は多意性
にあります。俳句や和歌の苦吟による推敲や「色即是空、空即是色」の「空」の論理は、1
秒では伝わらず、政治家やジャーナリストはイエスかノーかの2元論の議論に終始し、原理
主義者はモーゼの十戒のようなパラドックス表現を理解せず、自爆テロに走ることになる。
以上は、「ことば」と「時間」のカオスを「ことば」の面から例として述べたに過ぎません
が、同様な議論は10年ほど前に完成した「フェルマーの最終定理」や「すばる望遠鏡」な
どで分かってきた宇宙の

姿や、それと関係する昨年末のノーベル物理学賞研究などとも関連して問題となっています。
しかし、それらについては別稿で議論します。

東京自由大学は、大学とは名ばかりの、財政基盤もないNPO法人ですが、21世紀人類の
進化にいくらかでも貢献するために、21世紀人類進化論研究会、「龍馬会」を結成し、同
じ志を持った方々にも参加して頂くことを決意いたしました。神田紺屋町の場所(地図)と
会の予定については、インターネットで検索して頂ければ幸いです。皆様方のご支援ご協力
をお願いします。

「21世紀人類進化の希望」    進士多佳子

NPO東京自由大学では、かねてより、森と海と人と3者の知恵の立体的結合で、化石燃料
より格段に安く電力を得る太陽エネルギー工法の開発を進めていますが、私どもの「知恵の
継承研究所」も東京自由大学と協力して、新時代への希望を開拓し公報活動に結びつけたい
と考えています。「21世紀人類進化研究会」俗称「龍馬会」を計画、一介の武人坂本龍馬
が幕末の日本の進路を開いたように、小さなNPOが人類進化の役に立つことを念願してい
ます。

CNNのサイトに「マラウイの少年、独学で風力発電に成功 7年かけ」のタイトルで、
「干ばつに苦しむ東アフリカ・マラウイの貧しいむらでは、何もかもが不足していた。赤土
の大地はひび割れ、作物の枯れた畑をただ風だけが吹き抜ける。この風を使って、村に電気
を起こせば・・。そう思い立った少年が、たった1人で作業に取り掛かった。それから7年、
村では少年の作った風車5台が回り、電動ポンプが水を送り出している。・・・」私たちも
ウイリアム君に負けてはいられません。

「21世紀人類進化論(2)」     海野和三郎

朝倉書店「エネルギーの事典」とか云った本に、「文明」とはエネルギー利用の「形式」と
云っても過言ではないと、書いた気がする。年のせいで詳しいことは忘れてしまったが、老
子の「3から万物」を引用して、3つ以上の異なる次元間の相互作用が「混沌」即ち新しい
「文明」(複雑系)の起源である、と主張した。21世紀人類進化論(1)では、「エネル
ギー・地球環境・食料(人口)問題」の3者の結合した混沌が、21世紀人類進化の直接の
要因であることを述べた。「適者生存」はダーウィンの進化論の結論であるが、生命という
「複雑系」に於いては、原因と結果は相補的であることに注目したい。人類は「ことば」を
第一の手段として、猿人から何百万年の進化を遂げてきた。「ことば」以外の手段も色々あ
るが、「ことば」との組み合わせが種を特徴づけた進化の手段であった。何百万年といって
も、10億年の「いのち」の歴史からするとほんの一瞬にすぎないが、それでも、地球生命
を代表するような種となったのは「ことば」による情報伝達の利点によるものと考えてよい
であろう。ところが、21世紀になり、一つには、地球環境のような複雑系の「ことば」に
よる情報伝達や「生き方」の姿勢が、大別して、3つの理由によって問題が生じてきて、
「人類の新たな進化」とでもいうべき時代になってきたように思われる。

支離滅裂な議論で恐縮だが、3つの理由とは「ことば」の不完全性、「いのち」と「時間」
の非対称性で、この3者が根元的に絡み合った宇宙地球人類の進化であり、それが知れたの
が21世紀で、それを自覚するのが今の人類の「進化」ではないかというわけである。「こ
とば」には、その不完全性と多義性と伝達時間との3つの問題がある。ゲーデルが示したよ
うに、「私は嘘つきです」という命題は否定しても肯定しても矛盾に陥る、という否定形の
証明は単純明快であるが、むしろ、荘子の「魚のたのしみ」や老子の「3から万物」といっ
た「混沌」即ち複雑系の解釈に肯定形で適用して、まず新しい事態の理解に3つの要素を考
えるのが建設的である。ただし、心の徳目や自然現象のように、人の1世代30年より長い
ことの記述には、仁義礼智信や地水火風空の五行などが適当であろう。ところが、昔何年も
掛かって伝わった情報がケイタイで1秒で届く時代では、CO225%削減などという問題が最低
3つの側面からの複雑系の議論なしに、イエスかノウかだけの反応でジャーナリズムも国会
も片付けている。これでは日本も進化しない。

3の非対称性がカオス混沌の複雑系を生むことは、以前から天体力学の3体問題で知られて
いたが、10年ほど前「フェルマーの最終定理」が330年ぶりとかに完全に証明されたと
のニュースが伝えられた。谷山豊・志村五郎といった何人かの日本の数学者の寄与も大きい
とのことであった。定理は、ap+bp=cpとなる整数(a,b,c)のセットはpが3以上の整数につ
いては存在しない、という極めて分かりやすい定理なので、東海大大学院生の村岡真澄君と、
複雑系記述形式の典型であるフラクタルの概念を使って整理してみたら、中学・高校生が理
解できる簡単な証明があることが分かった。(a,b,c)3数の非対称性が根本の原因である。
もう一つ、昨年末のノーベル物理学賞南部・小林・益川による6個3世代のクオークの非対
称の話が耳新しい。宇宙が物質・反物質非対称になり、重力を生じ、膨張宇宙になった原因
は、自発的対称性の破れであるという。ここにも3世代のクオークが要となっており、フェ
ルマーの大定理と無関係ではなさそうである。更に付け加えるならば、「すばる望遠鏡」な
どの活躍で最近分かってきたことは、宇宙に存在する物質は、我々の知っている水素・ヘリ
ウム・炭素・酸素・窒素・鉄などの物質よりも遙かに多量の「見えない物質」があり、更に
それ以上の「見えないエネルギーが」あってそれが宇宙を限りなく膨張させているとのこと
である。3世代のクオークの話と「ダーク・エネルギー」の話とはどう繋がっているのか詳
しいことは知らないが、ここで気になることは、「時間」の概念がどうなっているかである。
教育通信134号に、中条利一郎「中島敦の「文字禍」に思う」に、「アト秒(10−18sec)
化学」の話があり、エネルギーと時間との積がプランク定数をはさんでの不確定性が問題では
ないかという議論であった。この10年間に、「宇宙」と「時間」との間にミクロの「物理」
をはさんで、新たな展開が必要になってきたようである。

また、それと並行して「いのち」とは何かである。「時間」も「いのち」も、誰もがよく知っ
ていて、使っているが、非対称の方向性をもっている以外は、誰も明確な定義を知らない。
さらに、それらを記述し、人類進化を先導してきた「ことば」は、今や、述語論理に見られ
る不完全性の他に、情報伝達「時間」の加速度的短縮と「ことば」の多意性の問題がある。
サルの目から見ると、10万年の社会の変容とここ数10年の変化とほぼ同程度であろう、
というのが、動物学者の春田俊郎さんの意見(続自然界99の謎)であったが、情報伝達時間
は100年が1秒に縮まってしまった。これは、複雑系である人類進化にとってプラスでもあ
り、マイナスでもある。また、「ことば」の多意性は特に日本語において顕著で、これも曖
昧さの上でマイナスでもあるがプラスでもある。  雑談になるが、最近面白い経験をした。
松本高等学校剣友会の会長、「峠の落とし文」なる感動の随筆もある元裁判官樋口正博先生
が百歳で亡くなられ、剣友会も終会にする議論が行われた時のことである。松高思誠寮寮歌
「春寂寥」の各章末尾にある、「あーわれ(かなし、さびし、さむし、ゆかし)・・・」が、
「ああ、われかなし・・」

か「あわれ、かなし・・・」かで、寮生活も長く校友会の重鎮であった小沢行雄、荻野良祐
(二人とも先年亡くなられた)の両名が論争して決着がつかなかった話を聞いた。両方とも
正解であり、また、どちらとも言えない寮生全体の青春の「こころ」でもあるとも考えられ
る。各人が各様に理解して差し支えないし、その方が一層味がある。同じことは、俳句や和
歌の推敲についても起こり、それが日本文学の特徴でもある。

従って、「色即是空 空即是色」「受想行識 亦復如是」は、説明されれば子供でも理解し、
私も十歳の時に憶えて常識となった。1,2年ほど前、タイだったかビルマだったかの高僧
が来て、東京自由大学で話をされた時、般若心経について質問したら、「色即是空」はブッ
ダの教えだが、「空即是色」は違うとのお答えがあり、小乗と大乗との違いが分かった気が
した。日本語の曖昧さは使い慣れればとても役に立つ。それを21世紀人類の進化に役立た
せることも出来るだろう。インドへ学会で行った時、特に「日本語」の効用とは云われなかっ
たが、日本人の漠然とした善意と理解力とが高く評価されることを指摘されて、驚いたこと
がある。 ヘレン・ケラー女史が、全ての人に生きる勇気をあたえるという偉大な業績をあ
げたかの第一の理由は、彼女が三重苦の身体障害者であったためである。彼女を支えたサリ
ヴァン女史も聞くところによると、平凡な女性であったという。日本人の短所を長所にして
我々も何かできるに違いない。土地も狭く、資源も少なく、その割に人口も多い日本の特徴
を活かして、地球環境天文学をやっていて、21世紀人類進化にどういう貢献が出来るだろ
うか。

21世紀、人類の進化は、エネルギー・地球環境・食料(人口)問題の織りなす複雑系の中
で、新天地を開拓しなければならない。森と海とヒトの知恵の共同作業もその有力な手段の
一つである。家庭規模で考えると、一辺50cm程度の正方形又は直角三角形などの平面鏡を2
0枚程度張り合わせて、全体として近似的な球面鏡を為すような非結像約20倍集光鏡を極
軸の回りに1日半回転するシーロスタット方式で、太陽光を固定のソーラーポンド内に水星
環境をつくり、水冷式の太陽光発電パネルをその中に置くと小面積のパネルでも10倍以上
の効率で発電する。発電に使われなかった8割以上の余熱は冷却水の対流で上部に置かれた
対流防止のポーラス・ソーラーポンドへ送られ、そこで短時間で沸騰水をつくり、蒸気ター
ビンを廻して発電すれば、太陽光発電パネルと合わせて3kW程度の発電は充分可能である。
制作費はおそらく20万円程度であろうから、10年使用すれば火力発電の何分の1かの費
用で、使う場所で作る電力が得られるであろう。夜間と悪天候に発電出来ないが、場所を選
ばず、送電設備を必要としない長所がある。

 前にも述べたが、森は光合成に用いなかったエネルギーを打ち水の原理で水蒸気に代え、
大気の対流を促進し、風を起こしてCO2を葉緑素に運ぶ効率を20倍にもして光合成の効率を
高める。超ノーベル賞研究、矢吹効果(矢吹万寿:風と光合成、農文協)である。また、海
は、塩度と温度の二重拡散対流不安定性(塩の指不安定性)を何億年も使って、深層ほど塩
度を高くし、それによって夜間や冬季、外気や上層が冷えても、深層で吸収された太陽エネ
ルギーが対流で逃げない仕組みになっている。これは、北欧の塩田地帯で水たまりが太陽エ
ネルギーで熱水となったソーラーポンド効果で、イスラエルでは、発電に用いた。塩を使わ
なくとも、2mm程度以下の隙間では、粘性の小さい水でも、対流を起こさず、保温の良い海
野・多賀式ポーラス・ソーラーポンドを作ることが出来る。海と森と人の知の結合が地球環
境を利用した進化の手段として適当であろう。


「海のアニミズム」        海野和三郎

地球環境を 護っている 海のアニミズム 小さな「塩の指」から それは始まった

暑い夏の日 静かな海面は 蒸発で塩分濃度が 高まり  
塩分の特に濃いところが 塩の指を作って 海面に突き刺さる 更に発達して 
塩の紐となり 塩分は 下へ下へと運ばれる
 
海流で平均化されるが 万年・億年経って 下層ほど比重が重い海水となる
太陽光は 100m以上 かなり深くまで達するが 夜間 冬季 外が冷えても 対流が起こらず
吸収された太陽エネルギーは 外へ出るのに 3千年かかる
その間に 海流が地球規模で 平均化する 海のアニミズムで 生き物は 生まれ 育ち
いのちを伝えている


「複雑系」を理解していないジャーナリズムと政界    海野和三郎

我々の社会には、いくつもの時間が流れている。人ごとに違う時空を持っていて、しかもそ
の時空が関連し、離散融合し、有為転変する。超多次元の複雑系である。それを最も良く理
解していた人に荘子がいる。荘子は、政治的な混沌の世相にうんざりしながらも、それを何
とかして正道に導こうと努力していた孔子は尊敬していたらしい。荘子が今いたら21世紀、
エネルギー・環境問題・グローバル経済に自己中心的な関心が支配する国際政治世界をどう
見るであろうか。

友人のところで、「複雑系の知」(田坂広志著、講談社)という本を拾い読みした。著者に
面識はないが、非常に面白い本なので、読んでいない方には、一読をお勧めしたい。全9章、
各章10項目近くあるが、各章3項目程度を抜粋して、参考に供する。序章に曰く、なぜ、
「複雑系」という言葉が、21世紀の「知」のキーワードであり、なぜ、「複雑系の知」が
人が生きる上に必要なのか?;奇跡の如く誕生した生命、人間、社会;インターネット革命
の意味。

第1章:社会の本質を知るにはどうすれば良いか?ポエットの知:分析によって失われる何
か;洞察や直感という方法の復活;ポエットの知で世界を感じよ。

第2章:社会の現実を変えるにはどうすれば良いか?インキュベータの知:管理のパラダイ
ムの限界;インターネットによる三つの革命;設計図を持たない革命;

第3章:社会の創発を促すにはどうすれば良いか?ストーリーテラーの知:創発の三つの条
件;戦略の鍵は自己加速系にあり;情報共有から情報共鳴へ;ストーリーテラーの知で共鳴
場を生み出せ。

第4章社会の歴史に参加するにはどうすれば良いか?アントレプレナーの知;ミクロのゆら
ぎがマクロの体勢を支配する;インターネット革命という追い風;アントレプレナーの知で
ゆらぎを起こせ。

第5章:社会の問題を解決するにはどうすれば良いか?セラピストの知;癒しとは進化であ
る;部分と全体は共進化する;セラピストの知で全体の癒しを求めよ。

第6章:社会の法則を活かすにはどうすれば良いか?ゲームプレイヤーの知:虚しい夢を描
いた社会科学;加速し続ける法則の進化;ゲームプレイヤーの知でルールを書き換えよ。

第7章:社会の未来を知るにはどうすれば良いか?アーテイストの知:未来が見えない不安
;創造的進化を遂げ続ける世界;アーテイストの知で未来を創造せよ;いまを生き切れ。

終章:いま、なぜ、複雑系なのか?21世紀に求められる複雑系の知;現代の知の無力さ;
専門主義の病;客観主義の病;分業主義の病;分離から合一へ;知を知ることは自己を知る
こと。
残る問題としては、まず、エネルギー・地球環境問・食糧問題の三つ巴の混沌から脱却する
具体的な21世紀人類進化のプロセスがある。金融経済・市場経済の二元論的もっと高次元
の複雑系経済を作れないでいる。そうしたグローバル経済を作れない現状を早く何とかすべ
きである。特に、国の政治に携わる政治家や世論のリーダーであるべきジャーナリストの言
論をみると、殆ど全て一性論のイエス・ノーに終始し、よくても二性論的でとても本質的複
雑系である国家、社会を理解している議論になっていない。国民の殆どは絶望している。

21世紀の共生の思想    酒井 孝            
複雑系文明社会の進化が問題になっていますが、ある談話会で、松本健一教授(麗澤大学)
の「泥の文明―21世紀の共生」の話が話題になりました。最近のテーマである「共生」に
ついて取り上げたものです。泥の文化圏から生まれた「共生」の思想が「民主」の思想をこ
える21世紀の文明論である、という主張です。
「泥の文明」の要旨はつぎの通りです。

1.文明には、石の文明(欧米)、砂の文明(アラブ)、泥の文明(東アジア)がある。日
本は泥の文明である。インドも泥の文明、中国は三者が混じりあっている。

2.石の文明は、牧畜を主とし、外に発展する力(征服、競争)を持つ。植民地主義や軍国
主義に走る傾向がある。今のアメリカの「民主」「拡大」、覇権主義の原因。

3.砂の文明は、砂漠地帯に生まれた。植物が生えないので、農耕や定住をせず、牧畜移動
(遊牧)生活を営む。部族間をネットワークする力を持つ。信仰は一神教である。

4.泥の文明は、水が豊富で温暖湿潤の東アジアモンスーン地帯に生まれた。泥のなかから
植物を育てるのは水田農耕である。特色は「内に蓄積する力」である。

5.日本は「豊葦原の瑞穂の国」。土を耕し方形の田と畦を作り、灌漑して米を作った。泥
(土と水)から生物が生まれる。太陽崇拝とともに万物に神が宿るというアニミズム、多神
教が生まれた。また米作りのための「共同体システム」(郷土愛と相互扶助)が日本の社会
を支えた。「共生」の価値観は日本独特のものがあり、稲作文化に根ざすものである。

6.日本的共生は、自他一体、相互扶助の関係を基礎とする。欧米では自他分離、対立競争
の考え方なので、「民主主義」といっても個人主義の色彩が強い。会社は株主のものという
株主主体論、従業員を労働力とみる考え方も、そこから出てくる。(参考)松本健一「泥の
文明」新潮選書、「砂の文明、石の文明、泥の文明」PHP選書 ・・・・・      
  
私の勤務先の創造経営グループでは、9月に発刊した「人づくりの経営」第T章3〜5で、
21世紀の共生の文明論を述べています。創造経営では、企業経営における「六種の利害関
係者集団」との共益、個人では「八種の人間関係人」との共生を目標としています。そのた
めに、自己中心でなく共生に適する人材の育成が必要であり、「1人ひとりの人間性の開発
による企業性格の向上が共生共益の組織風土を生み出す」という人間性重視の考え方をして
います。

 創造経営システムは、「生命」と「共生」をキーワードとしています。これについて、植
物生態学(森林学)の立場から説かれた宮脇昭教授の「森の文明」、環境考古学の立場から
説かれた安田喜憲教授の「稲作農耕文明」(長江文明)の説を学んだのですが、「泥の文明」
(松本健一教授)は比較文明の視点から述べたものです。

 自然のもつ生産力への信頼、生命循環の思想(生命の永続性)、共同体のシステム、もの
づくり、清潔と礼節など、日本的経営の特色は日本文化に根ざすものであり、稲作農耕文明
(泥の文明)から生まれたものであるという点は共通しています。

 文明という用語は、易経の離卦から出た言葉です。易の思想である、自然の生成力、天地
自然の循環、和諧(調和)の思想と重なるところが多いと思います。

「老子:3から万物」と21世紀進化論              海野和三郎

人に限らず、生き物は種の生存をかけて進化している。21世紀、人類進化の要因は、エネ
ルギー・地球環境・食糧問題が50年後の見通しが立たなくなったことである。また、今世
紀になって、分かってきたことが少なくも3つあり、その1つは、「3から万物」の整数論
版と考えられるフェルマーの最終定理の完全な証明であるが、他は、昨年度ノーベル物理学
賞:南部・小林・益川による「3世代6個のクオークの自発的CP対称性の破れ」と、「す
ばる望遠鏡」などによるビッグバン宇宙初期に近い原始銀河の観測とマター・ダークマター
・ダークエネルギーの存在である。21世紀初頭に飛び出した、これら3大発見の共通する
「3を起源とする複雑系」は単なる偶然であろうか、或いは、老子が言うように、「3から
万物」の最新版・宇宙版なのであろうか。海と森とのアニミズムに人のアニミズム(如来心)
を加えて、人類進化の1ページが進行しつつある。
   (
私達の教育改革通信  第135号 2009/11より