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当日メモ

基調コメント:久山 純弘氏(国連大学前客員教授)

国連OB会が日本でもようやく今年3月に誕生した。
生まれたばかりのベービーで、これから具体的に何をやるのか、何も決まっていない。

ところで今の世界の状況は一言で言えばカオス。 政治、経済、その他種々の面で未曾
有といってよいほど困難な問題、地球規模の諸課題が顕在化し、将来がなかなか見通せな
い状況。
そういった中で、国連にはどのような役割があり、また日本からはどのようなことが
期待されているのであろうか?

いうまでもなく、国連は不完全ではあるが、世界で最も普遍的な機関。
スエーデンのハマーショルド第2代国連事務総長(1953 – 1961年)は、「国連は人類を天国に導くためではなく、地獄に陥ることを防止するために創られた組織だ」と喝破した。

とりわけ東日本大震災を経験し、しかも「世界市民意識の芽生える端緒になったかも知れない」(ハーバード大学のサンデル教授)と言われるほどの物心両面の支援を国際社会から受けた日本としては、自然との共生を基盤とした持続的社会構築の重要性について国際社会に発信していく義務と責任があり、これ等を通じ、国連の使命の活性化に積極的に貢献していくことが必要。

国連の活性化を企る上での一つの基本問題は、国連の意思決定過程に国連の受益者たるべき地球市民の声(関心事)が殆ど反映されていないという現状を改革することである。
幸いこの点に関しては、ダイス国連総会議長(スイス)が就任演説(2010年9月)の中で、国連の正当性確保のためにも、政府関係者(国家主体)だけではなく、非国家主体(事実上地球市民)の国連の意思決定過程への参加の必要性に言及したのをはじめ、次いで2011年9月から総会議長の任にあるアル・ナセル氏も就任に当たり、「我々は歴史的に見て極めて重大な瞬間にこうして一堂に会している」との前置きに続き、世界の現状認識として(1)「アラブの春」に象徴されるガバナンスの実態への不満の爆発、(2)自然環境の破壊に基づく災害、人道的危機の頻発、(3)「世界大恐慌」以来の金融・財政問題を中心とした経済的危機、(4)不十分な人権問題への対応等を指摘した上で、国連にとっての当面の重点課題の一つとして地球規模問題への効果的な対処のための国連活性化、その一環としての市民社会の役割強化の必要性に言及している。

以上の諸点等も踏まえ、国連OBが出来ること、或いはなすべきことは何であろうか。結論から先に言えば、個人個人のできることは限られていようが、OB全体としてみれば、豊富な実体験もあり、以下を含め、潜在的には結構色んなこと(問題)をカバーする能力があるのではないかと考える。
(1)国連機関志望者等を対象とした研修、人材育成
(2)諸課題(問題)解決に向けての様々な役割(推進・先導役、コーディネーター、
調停役等)
例えば ・国連の意思決定過程に地球市民の声を組織的に反映させるための
メカニズムの強化、構築の推進役
・対人地雷禁止条約(オタワ条約)、クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)成立過程の事例(国際NGOのイニシャテイヴに基づき、有志国との協働の下に成功させた)をも参考に、核兵器禁止条約の成立に向けてのコーデイネーター役(具体的には、例えば対人地雷禁止条約成立過程の
キー・パースンであったJody Williamsのほか、既存の「平和市長会議」、”ICAN”、”Global Zero キャンペーン”等と連携し、日本政府等とも組んで「東京プロセス」を立ち上げる等)
(3)種々の諮問的役割

大脇: 個々ばらばらでは何もできない。全体の一部としてあってこそ機能する。近代化を推進した科学の時代は分化、これからの時代はそれをどう統合するか、ネットワーキングこそ力。久山先生は国連退職後も長年、市民と国連つなげることに関心を寄せて来られた。 今日、茨城県から出席くださっている森井さんは詩人として世界の詩人と連携しながら核の廃絶、紛争解決のために努力している。2010年8月彼女の依頼で国際平和文化フォーラムをお手伝いしたが、大成功だった。卵は受精卵であってこそ孵化できる。命があることが大切。命の無い無性卵ではいくら温めても腐るだけ。
その人ならではのボランティアのネットワーキングにより東大、京都、広島、長崎で感動的な出会いが数々あった。国際会議のプロが「このプロジェクトにいくら掛ったか、5000万円位か?」と聞かれその20分の1以下で出来たことに驚いていた。
国際協力も政府や国連主導だと経費の浪費、継続性から見ても無駄が多い。

森井 世界詩人大会は今年イスラエルで開催される。9月に行くので8月中に、ペレス大統領への贈るメッセージがほしい。イスラエル、核戦争のない世界を築いてほしい。ガザの子供たちにお菓子と水を届けたい、閉じ込めるだけでは不満の封印でしかない、ガザは64年も戦争に明け暮れて、監獄のような生活、

◎伊勢:(学校法人 AICJ鴎州学園理事長、国連OB初代会長)
私の悩みは、日本人はやさしいが、日本は変わっていない。どうしたら変わるのか。これが最初の一歩だ。
第2に日本の国力が下がっている。西洋文明の行き詰まり、次は何か。日本はどうして大事か、文明があり、教育がしっかりしている。生活できる知恵がある。世界に役にたつ。それがないがしろになっている。
国連ではなく、日本そのものが悩み。議論しないから何を考えているかわからない。
自民党も民主党も、教育論が出てこない。学者が新聞広告でも出してほしい。

武藤: 「和」の思想は21世紀の文明をつくる。EUの調和の原理が参考になる。アルザス、石油と石炭の奪い合い、1958年に2条が「調和の原理」でいく。域内戦争はない。尖閣、竹島、北方領土、奪い合いの帝国時代に戻っている。相互に使う、相互発展の方向で。

大脇: 西原春夫氏(元早大総長)も「共有の時代」を言っている。

伊勢: 国民的合意を作らないと外交は機能しない。ドイツ、韓国も国としてひとつにまとまっている。戦後、イデオロギーで右だ、左だと言って、きちんとした議論ができない。組織でも合意しても従わない人がいる。

大脇:日本では“多数の暴力”という民主主義の原則からははみ出した超合理主義がまかり通っている。」 上位下達のシステム(官尊民卑)には慣れていても下意上達(市民重視)のシステムが未成熟。

伊勢:世論がついて来ないので外務省は外交ができない。これは福沢諭吉が130年前にいっている。教育こそが大事。

前川(ベニンNGO,ココナツの会代表): ゾマンホン(ベニン人)は「今のあなたがたは日本人じゃない、日本のどこが良いのか、悪いのか。歴史を学べないといけない。精神的なものを学べ。」と言っている。またエマニェル(ベニン人)は「和解一致運動」( The Africa, America and Asia Reconciliation (AAAR))と言っても、怨念が解消されず2,30年経つとまた紛争が噴出すことが多い。見えない心の怨念をいかに解消するかに心を向けるべき。ゾマホンはアフリカ人として欧米に対する怨念解消のための民間機関を手伝っている。

一色:トインビーも心のバランスシートをいっている。大変なことがおこったとき、出てくる。イスラエルとアラブ、いまだに紛争をやっている。報復から報復の連鎖だ。

大脇:見える物だけで動いているから。昨年まで7回シリーズで「和の哲学・実学研究会」をやったが、講師の大和信春氏は目に見えない心の分量を欣量(喜び)、辛量(辛さ)として顔の表情を10段階で絵にして表現している。目に見えない心の世界まで含めたことで、新しい経済学の分野を拓いている。

伊勢:紛争解決は紛争の停止で終わったわけではなく、後が大事、土地の魂にどう答えるかというのが大事。その和解がないと解決ができていないのかもしれない。

一色:それぞれの国に歴史がある。自国の視点で世界を見る。キーは人間にある。良心のどこを引き出すか。意識の変革が必要。人間の変革がないと世界は変わらない。
人生の悲劇は死ではない。生きながらの死こそが最大の悲劇だ。生あるうちの何をするか考えないといけない。調和の哲理が、自己中心性に押しやられて、愛と思いやりが消えている。原発、恐ろしいこと。見失ってはいけないものがある。あったら良いが無くても良いもの。端的に無くても良いものもある。制御不能という技術はまったくだめだ。ドイツは全廃方針だ。福島の出来事が世界に影響を与えた。